音楽アラカルト1

10月16日/

[『孟子』に注目!「仁を修め、義を修めると、ついには楽の神髄へ通じる]

◆『孟子』に、表題のごとく「楽」=「音楽」について思想家・孟子の言葉が書かれています。“孟母三遷の教え”で知られる孟子は周王朝の紀元前372年の生まれとされます。幼くして父を亡くし、母の手一つで育てられる。住居は初め墓地の近くで、彼が葬式の真似事ばかりして遊ぶので、母は次に市場近くに移住。すると商人の真似ばかりして遊ぶので、次に学校の近くに引っ越すと、祭祀や儀礼の真似事をして過ごすようになり、母はここが「教育に最適」と思った――という故事が、孟母三遷の謂いだとされます。

◆孟子はよく学び、中国随一の思想家として“聖人”とされる孔子の教えを継承し、聖人の道を広めたと評価されています。その孟子の思想=言辞、行動・治績をまとめた書籍が『孟子』です(ちなみに孔子のそれは『論語』)。

◆「楽」に関する言辞は『離婁篇』中に。小生所蔵の『孟子 中国の思想3』は同書筆者ら(『中国の思想』刊行委員会)がほどこした日本語訳と原文(直訳)が併記された部分と、直訳をさらにわかりやすく現代風に解説した部分から成っています。まず解説文を紹介します。次の通りです。

◆「リズム」という小題(さすがに現代風解説文)付きで――。<仁の神髄は、親に孝行すること、義の神髄は、兄に従順なことである。智の神髄は、この二つをわきまえ、忘れないこと、礼の神髄は、この二つを折り目正しく行うこと、楽の神髄は、この二つの情操を音楽化することである。その音楽を聞けば、仁義の心が湧いて来る。湧いて来れば、抑えておけない。抑えておけなければ、ついリズムにのって踊り出すように、自然に仁義を行うものだ。>

          (※原文と直訳文は、この続きで次回にアップします)     (宮﨑記)