9月30日/
[大隈重信邸の台所は25坪だった・・・『食道楽』]
◆村井玄斎の『食道楽』は明治の文明開化期の、日本の食事情をあますところなく伝えていて、興味深いです。当ホームページの<食アラカルト>で先に一瞥しました。同書は上下巻あり、ともに500ページを超える大作で、つまみ食いし、いったん市図書館に返本するに当り、1点追記します。
◆上巻の巻頭に、結い髪・和服姿の女性達が立ち働くひろーい台所の口絵があり、「大隈伯爵家の台所」と書いた説明文が載っています。以下です。
◆<巻頭の口画に掲げたるは現今上流社会台所の模範と称せらるる牛込早稲田大隈伯爵家の台所にして山本松谷氏が健腕を以て詳密に実写せし真景なり。台所は昨年の新築に成り、主人公の伯爵が和洋の料理に適用せしめんと最も苦心せられし新考案の設備にてその広さ二十五坪、半ば板敷き半ばセメントの土間にして天井におよそ四坪に硝子明取りあり。極めて清潔なると器具配置の整頓せると立働きの便利なると鼠の竄入(ざんにゅう)せざると全体の衛生的なるとはこの台所の特長なり。口画を披(ひら)く者は土間の中央に一大ストーブの据えられたるを見ん。これ英国より取り寄せられたる瓦斯ストーブにて高さ四尺長さ五尺幅弐尺あり、この価弐百五十円なりという。・・・・(中略)同邸の一名物と賞せらるる温室仕立の野菜なり。三月に瓜あり、四月に茄子あり、根菜果茎一として食卓の珍ならざるはなし。・・・・(後略)>
◆NHKの『晴天を衝け』に登場する大隈の口調の癖「・・・であ~る」は、演出ではなく、実際にそうだったようですが、真偽については宿題に!
(宮﨑記)