市販の弁当やレトルト食品は軒並みミネラル不足

2月23日。コンビニやスーパーの弁当は、美味しく味付けされ食品群もバラエティ豊かに作られていて、良く買われていますね。私も時々。確かに便利です。でも「カルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛、銅などの大切なミネラルが決定的に不足している」--そんな実体調査の結果を、8年間もその調査を行っている「NPO食品と暮らしの安全基金」の小若順一代表に「医食同源研究会」で発表してもらいました。まれに”合格点”のものもあるというレポートです。以下はその講演録。読んでみて下さい。市販弁当を頻繁に食べる人は要注意ですよ!!

【NPO研究会「食と農と健康を見直す~医食同源研究会~」の第2回講演】

●●講演タイトル「ミネラル不足食品の問題を考える~ミネラル足りて、病気が治る~」●●講演者:小若順一氏(NPO法人食品と暮らしの安全基金代表)●●日時・場所:2015年11月5日(木)午前10時~12時  於:東京市民ボランティアセンター●●共催:NPO食と農と健康/公益財団法人都市化研究公室

 ≪講演の概略≫

1)講演の内容は一言でいえば、「NPO法人食品と暮らしの安全基金」が市販の冷凍食品・レトルト食品・惣菜・弁当等を購入し公的検査機関に依頼し、主要ミネラルの含有量を検査する活動を過去8年に渡って行っている実績に関するレポートである。その結果は、調査した市販の冷凍食品や弁当のほとんどが主要な微量ミネラルのカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、カリウムにおいて、厚労省が定めた「食事摂取基準」の基準値を著しく下回り、「まったくの危険ゾーン」にある――というものであった。小若さんは「推奨量」の半分以下しか摂取できない状態を指して、「全員病気のレベル」、4分の1を下回ると「死ぬレベル」という言葉で表現した。そのくらい危険だ! という感覚的表現である。つまり、その食品・料理だけを毎日長い期間食べ続ければ「ミネラル摂取量はまったくの危険ゾーンである」というのが、小若さんの評価の真意。長い期間とは、例えば「1ヵ月以上」と小若さんは指摘した。食事摂取基準は男女・年齢別に定められ、微量ミネラルのカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅は「推奨量」と「推定平均必要量」(推奨量より少ない)が示され、カリウムは「目安量」が示されている(下方の写真参照)。

2)厚労省の食事摂取基準は、例えばカルシウムなら1日に食べるすべての食品から基準量を摂ることになるその基準(他のマグネシウムなども同じ)である。同法人が調査した弁当の実測値はその弁当と同じ程度の栄養量をもつ弁当を日に3度食べると仮定し、3度分が基準値と比べてどうなのかを見る視点が現実的意味をもつものと思われるが、検査結果はそう見てもほとんどが危険ゾーンにある――というものであった。大手メーカーの各種冷凍食品もレトルト食品も、話題の「食事」業者の食品も大学の学食の弁当もほとんどが危険ゾーンだった。実にショッキングな結果だが、稀に合格点の食品もあり、合格の有名弁当店の弁当1点が目を引いた。以下の6)で具体の結果を示す。

3)では、ショッキングな検査結果の原因は何なのか? 原因の1つは弁当などの調理食品の食材が多くは加工食品であり(東南アジア等からの輸入品も多い)、「水煮」加工されているので、その過程で、多くの食材から大切なミネラルが大量に水の中に抜け出しているため、と小若さんは指摘した。そのことも含め、原因を以下の7)にまとめて示す。

4)同法人のミネラル不足食品の検査結果は、同法人発行の月刊誌『食品と暮らしの安全』でずっと公表されていて、今講演では15年10月発行のNo.318号が参加者に無料進呈された。その裏表紙に示された最新の結果を下に掲載する写真で見ていただこう。検査結果は、グラフを使い分かり易く現わされている。同号の検査食品は「しじみ・あさりの即席みそ汁」で、しじみ6品と、あさり2品を混ぜて実測したもの。調査では、基準を何に求めたか? 冊子の字が小さいので明記すれば、『豆腐みそ汁:主食・主菜・副菜料理成分表』より「足立巳幸監修」(足立先生は第一線の栄養学者で女子栄養大学名誉教授)とある。その基準は厚労省の食事摂取基準に基づいているのは言うまでもない。つまりミネラル栄養調査の基準とすべきは、ほかならぬ正にその基準である、というわけだ。同法人のこれまでの一連の食品検査は、すべてそれを基準(拠り所)にしている。検査の依頼先は「埼玉県食品衛生協会検査センター」である。

5)「しじみ・あさりの即席みそ汁」の検査結果は、これも字が小さいので明記すると、カルシウムは、「推奨量」が217mg(「推定平均必要量」が183mg)に対して、実測値は19mg。マグネシウムは、推奨量が97mg(同80mg)に対して、実測値は18mg。鉄は、推奨量が3.5mg(同3.0mg)に対して、実測値が0.5mg。亜鉛は、推奨量が2.7mg(同2.0mg)に対して実測値が0.2mg。銅は、推奨量が0.27mg(同0.20mg)に対して実測値が0.06mg。カリウムは、目安量が667mgに対して、実測値が118mgだった。

食品と暮らしの安全318号の裏表紙160111

 6)食品ごとの調査結果・・・・・・・

ほとんどの食品でカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、カリウムで基準値を大きく下回り、多くがそれだけを食べ続けると「危険ゾーン」とされるものだった。それらの食品を以下に列挙する。ただし、カッコ内には“グッド・ニュース”、つまり例外的な合格品であったり、食べ方に注意したり自分で食材を加える工夫をすれば、危険度が改善されるという“小若さんアドバイス”を付記する。それにもご注目を。

ほとんどが「危険ゾーン」という食品群は以下である!!

コンビニやスーパーの弁当(「米八」の弁当だけは合格点)、宅配弁当、冷凍チャーハン、天丼、牛丼(具の大盛りならいくらか良い)、チーズ入りハンバーグ、ラーメン店のラーメン(塩分が多いが、スープを飲み干せばミネラル分の問題はいくらか解消される)、焼きそば(まったくダメだが、アオサを沢山かけて食べるとマグネシウムが改善される)、レトルトカレー、エビピラフ、ポテトサラダ、マカロニサラダ、ゴボウサラダ、おにぎり類(シーチキン、コンブ、紅シャケなどすべてダメ)、回転すしの寿司(ただし「がってん寿司」「銚子丸」の寿司は亜鉛だけ足りていた。アオサ汁を飲めばマグネシウムが補強されるのでベター)、ハンバーガー店のハンバーガー(鉄だけ足りていた。チキンやチキンナゲットなどチキン系統はダメ)、店のギョウザetc・・・・・。

特筆すべきは、厚労省の職員食堂の定食もダメ、女子栄養大学の学食のランチもダメ。それに対して、国立オリンピック・スポーツ科学センターの栄養指導食堂の1食分の料理は、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などがすべて基準達成だった。「オリンピックに出場する、あるいはその候補のアスリートのための食事だけに、特別待遇らしい内容だった」と小若さんはコメントした。

 7)ミネラル不足の原因・・・・・・・

 ①水煮食品の増加。上記3)で見た通り、調理食品の原料には数えきらないほど多くの加工食品が水煮加工され使われていて、原料の食品からミネラル分が抜け出しているのが第1の原因。ニンジン、イモ類、キノコ、豆類などが、人件費も原材料も安い中国やベトナムで水煮され、何度も良く洗って(ここでもミネラルがさらに抜け出す)、パックし加熱殺菌され輸入されているのだ。

 ②玄米を精米し(精製し)白米で食べる人が圧倒的に多いが、その際に削り落とされる玄米の糠の部分に各種のミネラルが含まれていて、ミネラル摂取の機会をわざわざ捨て去っているケースのごとく「精製食品」が増えているのが2つ目の理由。コメ以外では、精製油脂が幅を利かせている点も大きな問題。

 ③加工食品の多くに、いろいろなリン酸塩が食品添加物として、結着剤、乳化剤、Ph調整剤、酸味料の目的で使われているが、体内からリン酸塩が排出される際、ミネラルもそれに捕捉され体外へ出てしまうのが、3つ目の理由。ミネラル量の検査時点というより、市販食品を食べたあと、食品に含有されていたミネラルが(そもそもほとんどが「危険ゾーン」の量なのに、そこからさらに)減ってしまうというわけだ。

8)講演では、こうした問題点に続いて、同法人が独自に商品化している、煮干やアゴ(飛魚)などを原料に製造する無添加の「天然だし」を食べた人達が、さまざまな病気や体調不良を克服したという沢山の事例を小若さんが紹介した。その天然だしは、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、カリウムなどのミネラルをたっぷり含有しているため、脳や神経、ホルモンの働きが正常化し、体調が良くなるだけでなく、病気の改善にも大きな効力を発揮するのは当然、と小若さんは強調した。沢山の事例のうち印象的だったのは、アスペルガー症候群と診断された小学生が、天然だしを食べるようになって、学校では落ち着きがなく授業もちゃんと受けられなかったのに、見る見る精神状態がよくなっていき、次第に成績も向上し友達も出来ていったという報告だった。2010年に発行された『食べなきゃ、危険』(三五館。小若順一・国光美佳著)にその回復ぶりが詳しく紹介されている。

 ※上記6)に書いた「危険ゾーン」の食品に関する記述は講演のダイジェストである。市販食品のミネラルがこうも不足しているのかという全体の理解をしていただくために、わがNPOのHPではダイジェストを公開することにした。企業名や店名を挙げて講演した小若さんの詳細な講演録は私の手元にある。ミネラル不足食品の8年間に及ぶ、同法人の全部の調査結果を知りたい人は、「NPO法人 食品と暮らしの安全基金」(電話048-851―1212)へお問い合わせ下さい。              (文責:宮崎)