食と農と健康を見直す~医食同源研究会第1回

第1回研究会の議事録(抄録)を以下に。漢方薬剤師のお話、お読み下さい。

日時と場所:15年9月24日am10~12  東京市民ボランティアセンター(東京飯田橋)。講師:松下元之さん(薬剤師。漢方薬局「デュ・アン」経営。社員研修・講演活動でも活躍)・・・・写真は、松下さん(右手前)の講演風景。

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《松下元之氏の講演『漢方養生ライフのすすめ』》 (お話調でなく書いています)

現在59歳。つい最近、めまい、頭痛、激しい動悸などの症状に加え食欲も減退し、仕事の意欲まで落ちる状態がしばらく続いた。すべて自律神経失調の症状であり、男の更年期症状を出してしまった。健康指導をしている自分がこんな情けない状態になり、自信喪失、自己嫌悪に陥ってしまった。しかし、これも自分に与えられた試練と気づき、先ずは今日の講演をしっかり務めようと気持ちを定め、日ごろお客様にお伝えしていることを改めて見つめ直し、日々実践することで、ほどなく元気を回復することができた。

22年前のこと、36歳だった妻がクモ膜下出血で倒れ、死線をさまよった。一時、呼吸と心臓が止まり、もうダメと宣告されたが、奇跡的に助かった。退院しリハビリ生活を過ごし、自分のことはほぼできる状態にまで回復して、本当にありがたい。回復したのは幸運だったし、本人の持つ生命力の強さのおかげだと思う。呼吸と心臓が止まったと言われたとき、これが死なのかと生々しく受け止めた。そこから生還してくれて、私にとって何物にも代えがたい貴重な体験をさせていただき、その後の自分の価値観を大きく転換できた。病気にならない「未病」という概念や病気の「予防」の追究へと方向付けを一段と強固なものにしてくれた。そして「漢方」に軸足をおいた薬店経営に乗り出し、今日に至っている。

玄米を食べよう! 白米<玄米<発芽玄米 の真理。

(白板に米粒=白米と玄米=の絵を描いて)、白米は、玄米の外側の糠の部分を削り落としたものである。白米と糠を加えると、玄米と同じものになる。表面的にはそう見える。でも違う。何が違うか? 玄米は水分などの条件を与えると発芽する。これに対し、白米は発芽しない。この違いは、玄米は生命力を持っているが、白米はそれを失くしている、ということだ。玄米は、外側が茶色で黒っぽい。植物は太陽から逃げられないので、その色によって太陽から生命を守っている。だから黒っぽい玄米は強い生命力を保持していると解釈することも出来る。この側面も覚えておきたい。

玄米は白米と違い、生命力を持っていることが分かったと思う。ビタミンやミネラルなどの栄養素を見ても、玄米の方が含有量は遥かに高い。数字を見ると、玄米が圧倒的に優位であることが分かる。発芽玄米という商品があるのをご存知だろう。玄米をかすかに発芽させると、そのときガンマー・アミノ酪酸(GABA)という物質が生成され、それが血圧抑制や脳の血流改善など多岐にわたる効能を持つとされていて、その発芽玄米の評価が最近とみに高まっている。

食が健康の決め手。私は、穀菜食。

九死に一生を得た妻が健康を回復するためには食べ物がポイントだと思った。薬剤師の直感でもあった。妻が退院すると、すぐ玄米を食べさせるようにした。野菜は極力、無農薬有機栽培のものを選び、一方で、肉よりも魚にした。私自身も同じ食生活にし、11年前からは主食の基本を発芽玄米にしている。魚はときおり食べるが、ほとんど菜食中心である。やはり日本人の本来の食事である「穀菜食」が基本になるなと実感している。そして、重要な食養生の基本として「主食:副食の割合を7:3」としている。そのバランスに加え、主食の発芽玄米と有機無農薬野菜の強い生命力が、妻の健康回復に大きく寄与したと信じて疑わない。またそれが、私の健康作りの土台になっていることも実感している。

心身一如。心をいつもプラスイメージに。

(皆さんにやってもらいたいことがあるとの呼びかけがあり、それに従い、男女別々に2人1組になる。1人が相手の背後から相手の腹に両手を回し持ち上げる実験である。実験では、持ち上げられる人は、①楽しく嬉しい心がワクワクすることを想像する、②辛く悩み深く暗い気持ちになることを想像する、との指示があり、2つのパターンで試した)。①と②の大きな違いを持ち上げる側は感じただろう。①では軽く、②ではとても重く感じた、というのが多くの人の感覚のはず。これはどういうことか? 心がプラスイメージのときは身体も軽やかで良い状態にあり、心がマイナスイメージのときは身体も重く悪い状態にあるということだ。ずっとマイナスイメージでいると、ほんとに病気になってしまう。「心身一如」なのだ。冒頭に話した私の体調不良とその回復は、その現れだったと思う。いつも心をプラスイメージにしておくことが大事だ。

呼吸も陰陽のバランス。朝起きたら深い呼吸を。

(ゆっくりと息を吸い込み、ふーっとそれを全部吐き出す「腹式呼吸」を参加者にやってもらうパフォーマンスを挟み、呼吸の大切さの話へ進んだ)。深い呼吸により自律神経が良い状態に維持される。(その呼吸を何回か繰り返し)、皆さんも気持ちの落ち着きを感じられたはずだ。人体そのものを含めて大自然・大宇宙のすべての事象は、相対する“陰と陽”の相互関係にあり、それがダイナミックに調和して成り立っている。吐く息・呼気は「陰」であり、副交感神経が優位となる。吸う息・吸気は「陽」であり、交感神経が優位となる。息を止める留気で、心身が充実する。それが呼吸の調和である。このことを覚えておいて欲しい。毎朝、起きたら深い呼吸を実践すると良い。目覚めたら、意識領域にすぱっと飛び出すことが大事だ。これが健康づくりのポイントの一つである。

 「人間の生きている力を・・正気(せいき)と言う」。気はエネルギーだ。

生命力とは、生きとし生けるものすべてが<己れのいのちを生かす力>だ。漢方では、この力を「正気」(せいき)と言う。“正”とは生命がプラスの方向へ発展していくことを表し、“気”とはエネルギーのことを言う。(「人間の生きている力を正気という」――とこの言葉を何回も大声で唱和させ、「正気」の意識を頭に刷り込ませた)。生命力は大きく二つの要素から成り立っている。一つは両親から受けつぐ“先天の気”(せんてんのき)であり、もう一つは、この世に生を受けてから大自然の恵みとしていただく“後天の気”(こうてんのき)である。後天の気は、“天の気”(てんのき)と、”地の気“(ちのき)の二つに分けられる。天の気とは、空気・光・温度などよりいただくエネルギーのことであり、”地の気“とは、食べ物・飲み物からいただくエネルギーのことである。「人間の生きている力を正気という」。この言葉を毎朝、声に出してみると良い。正気の“気”を感じることになる。

私は一日一万歩が目標。「少飲少食多動」主義で。

姿勢とは、姿(すがた)に勢(いきおい)があると書く。クムバハカの姿勢を学ぶと良い。簡単に言うと、お尻をしっかり締める、首・肩の力を抜く、丹田(オヘソの少し下)に力を込める姿勢である。これも大切な健康づくりの一つだ。(「公益法人 天風会」のURLは次。 http://www.tempukai.or.jp/ )

 健康づくりに絶対欠かせないのは運動をすること、身体を動かことだ。私も毎日散歩を欠かさず、電車の駅間もなるべく歩くようにしていて、一日一万歩は歩いている。階段は一段飛ばしで踏み込んで歩く。ゴルフが大好きなので、それもときどきやっている。一言で言うと、「少飲少食多動」が決め手になる。

講演のまとめ・・・気・動・食が幸福(健康)の3本柱。楽と薬の隠れた関係。

 私の健康づくりは、気(気持ちの使い方、心の使い方)・動・食が3本柱である。そのすべてに関し、自然の法則・摂理を学び感得し、より自分らしく、より自然に生きる! ということに尽きる。それが私の「漢方養生ライフ」の要諦であり、私は「一に養生、二に漢方」を提唱している。「少飲少食多動」の言葉も忘れずに生活に取り入れていくと、確実に「健康回復・維持増進」、当然に「病気予防」につながる。幸福な人生の秘訣は、生活を「楽しむ」ことにある。この「楽」にクサカンムリを付けると「薬」という字になる。それが自然観のエッセンスだ。

 

《質疑》 

Q1)漢方をどう日常で生かすと良いですか?

漢方を“自然の恵み”ととらえ、漢方薬にとらわれることなく、大自然の恵みを生活に取り入れることが大切です。たとえば、入浴剤として、ヨモギやカモミールを利用するとか、ドクダミや薬草を健康茶としていただくなど、できることから始めてください。そうした実践を重ねるうち、興味が広がり様々なことを学ぶようになり、自然派志向の生活習慣が身につくと思います。「一に養生・二に漢方」主義で、ぜひ。

Q2)松下さんの、一日3食の食生活は具体的にどんな中味ですか?

朝は・・・・・・スムージーです。もう20年以上続けています。豆乳、玄米粉、寿元粉(大豆の成長因子)、浄身粉(ハトムギの全粒粉)、ラフィノース(甜菜糖)、バナナ、リンゴなど季節の果物。昼は・・・・・・外食が多いですが、体調を崩してからは、発芽玄米のおにぎり、発芽玄米のお粥など。夜は・・・・・・発芽玄米・五分づき米・十五穀雑穀ブレンドのご飯(会場で、試食に供された)を主食として7割、副食を3割にするよう心がけています。有機野菜は有機食品店から宅配してもらっています。玄米・発芽玄米は宮崎理事長の著書( 『汝の食物を医薬とせよ』 )の生産者・秋田県大潟村の井手さんの米を11年前から買わせていただいています。偶然のご縁です。類は友を呼ぶ、ですかね。井手さんの有機無農薬の玄米・発芽玄米は正真正銘、安心安全でパワフル。お客様の評判が高まっています。    (以上。文責:宮崎)