7月28日 How are you doing?
消費者行政のあり方について、このところずっと考えています。少し前にも、
当欄でそのことに触れました。
消費者行政にいま最も求められることは何でしょうか?
「消費者相談」の充実だと思います。先にもそう述べましたが、今一度、角度
を変えて、そのことを論じたいと思います。
消費者相談の充実とは・・・・・・消費者のあらゆる悩みや困り事を引き受ける態勢
を整えることです。財政上の問題で相談窓口が縮小されている現状を前回見まし
たが、とんでもない。この時代、単に窓口を広げるだけでなく“相談何でもOK”
の“個別相談態勢”を強化しなければなりません。それがあるべき姿です。ここ
で大事なことは、財政上、窓口の縮小が仕方ないとしても、個別相談態勢の強化
は必須だということです。
なぜ必須なのか? デジタル時代・インターネット時代の進展と、一方における
高齢世帯・独居世帯の急増により、消費者相談の需要は著しく個別的になってきて
いるからです。
また消費者行政の現状はというと、消費者を守る体制は高度に洗練されたもの
になっており、ここにおける消費者行政は“相談何でもOK”の“個別相談態勢”
の構築を次の目標にすべきだ、と私は思っています。
消費者の権利や安全が業者によって犯されるか犯されないかのボーダーライン
の案件も、さらにはボーダーライン以下の案件も、行政はすべての相談を引き受
け、消費者がその案件の解決ができ、悩みから解放されるサポートをしっかり行
う体制作りをすることがいま求められている、と思うのです。
個別相談態勢の充実により、孤独死だって相当救えるかもしれません。消費者
相談=消費者行政という観点から、孤独死問題へアプローチし実効が上がるなら、
それこそ消費者行政の勝利と言ってよいでしょう。
× × ×
消費者行政の歩みを簡単に振り返ると――消費者を守る法律が長年月をかけ、
種々整備されてきた中で、民間ではADR(裁判外紛争解決手続)という消費者・
企業間の紛争処理機関が設置運用されるようになりました。また自治体としては、
例えば東京都の場合、消費者被害救済委員会を設け、消費者からの申し出を受け
紛争解決に向け「斡旋」や「調停」を行い、場合によっては消費者訴訟に対して
訴訟費用の貸付も行うという制度の充実強化を図ってきています。
こうした消費者保護の態勢は、戦後「主婦連合会」などによる不良マッチ追放
運動から始まり、物価との戦いや反公害運動を経て消費者が勝ち取ったもので、
いまや体系的により良く整理洗練され、まずまず評価できるレベルまで到達して
いると言っていいでしょう。
一方、そうした歩みの中で「自立する消費者」という目標を掲げた行政の各種
啓発事業が効果を上げ、消費者の自立は相当進んだとも言えましょう。
しかしそれでも、先に述べたように、時代の変化の中で消費者被害や消費者の
悩み・困り事は絶えず、多くの消費者が「迷える子羊」的存在だろうと私は見て
います。だから、“相談何でもOK”の“個別相談態勢”が必要なのです。
その態勢を有効ならしめるには、力量のある相談員をどう確保するかがカギな
のはいうまでもありません。相談員の力量をアップさせるための訓練も必要です。
そのことについては別な機会に検討することにします。
ところで、パソコンやスマホをもたない・利用しないといった人達、あるいは
相談窓口の存在を知らない情報弱者にどう対応するかが、1つの重要なポイント
になります。この問題もなかなか厄介、別な機会に考察することにします。
(7/28 宮崎記す)