【立教新座高校卒業生への感動のメッセージ・渡辺校長の講演を聞く】
掲題のメッセージは、東日本大震災によって2011年度の卒業式を中止した
立教新座高校の渡辺憲司校長先生の、広く若者へ贈る「人生の応援歌」だと私は
思っています。同校のホームページに全文があります。2011年3月24日付け
のものです。万人の胸を打つ名スピーチです。一読の価値、また再読の価値、
大いにありです、ぜひ訪問してみて下さい。
渡辺憲司という名前を聞き立教のあの校長先生だとすぐピンときて、しかも
無料だという講演会を昨23日、藤沢市民会館に聞きに行きました。江戸文化が
専門(文学博士)の渡辺先生は飄々として、昨年のあの震災後を生きる私たち
にとって、そして現代を生きる私たちにとって、何が大事かを自らの言葉で語ら
れました。
僭越ながら一言でまとめれば、被災者と悲しみを共有しよう(少なくとも3年
間は喪に服す心情と行動が必要である)、明治以降薄れつつある日本人の精神の
根幹にある慈愛と孝行の心を大切にしよう(親子にかぎらず、上が下を慈しみ、
下が上に孝行するという関係が今日の社会に不可欠である)、と説かれました。
中高校生や大学生の教育にあたる豊富な経験を踏まえ、「いまどきの若者は・・・」
と見くびった接し方をするのは間違いであるとも強調されました。終始解りやす
い言葉で、ユーモアを交えて語られ、教育者としての深い愛情と人間理解が垣間
見えるものでした。
昨年の立教新座高校卒業生に対する、卒業式の式辞に替わるメッセージは同校
のホームページに掲載されるやあっという間に30万件のアクセスがあったそう
です。メディアでも取り上げられ話題になりました。そのメッセージも教育者と
しての深い愛情で貫かれています。「人生の応援歌」にほかなりません。以下に、
その一部を抜き書きします。文中「くそまじめな男になれ」といった、男に限定
した表現がありますが、立教新座高校は男子校だからです。
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(途中略)
悲惨な現実を前にしても云おう。波の音は、さざ波のような調べではないかも
しれない。荒れ狂う鉛色の波の音かもしれない。
時に、孤独を直視せよ。海原の前に一人立て。自分の夢が何であるか。海に向
かって問え。青春とは孤独を直視することなのだ。直視の自由を得ることなのだ。
大学に行くということの豊潤さを、自由の時に変えるのだ。自己が管理する時間
をダイナミックに手中におさめよ。流れに任せて時間の空費にうつつを抜かすな。
いかなる困難に出会おうとも、自己を直視すること以外に道はない。
いかに悲しみの涙の淵に沈もうとも、それを直視することの他に我々にすべは
ない。
海をみつめ、大海に出よ。嵐にたけり狂っていても海に出よ。
真っ正直に生きよ。くそまじめな男になれ。一途な男になれ。貧しさを恐れる
な。男たちよ。船出の時が来たのだ。思い出に沈殿するな。未来に向かえ。
(以下略) (6/24 宮崎記す)