腸内細菌のまとめ

2月1日 How are you doing

正月料理を食いすぎて腹を壊し数日間も食欲喪失、というヘマをやらかし、

それで腸内細菌のことを思い、2012年の「ペンとパン」の記事を始めました。

2回も書き、ぜひ3回目も書きたいと思いつつ、しかし突発の仕事で棚上げ

してきましたので、久しぶりの原稿更新ですが、またも腸内細菌でいきます。

予定をクリアしないと腹の虫が収まらないのです。

 腸内細菌で思い出すのが、4年前の2月に急逝された故小林寛早稲田大学

理工学部名誉教授のことです。「鍋の側壁」を二重にした超省エネ型の特許鍋

の発明者で、物理学者にして「食と農」に関しても一家言をもち、「医食同源」

の実践的普及運動のトップランナーでした。世の森羅万象を科学者の眼で見、

哲学的に意味づける、と評したい懐深い人間味溢れる研究者でもありました。

私にとっては心から敬愛するお手本的人でした。だから、腸内細菌とくれば、

故小林先生のこの話を書かずにおれないのです。以下です。


人は自己治癒力=ホメオスタシスをもっています。それをどう引き出して
やる
かが病気を治すための、あるいは病気にならないための決め手です。
 さて、小林先生の話・・・。いまからだと20年ばかりまえのこと、小林先生
例の特許鍋(「はかせ鍋」と入力しインターネットで検索してみて下さい)
の講習会に長野県のある町に行かれた際、一人の母親から小学3年の息子T
の病気のことで相談を受けたそうです。
T君は町医者から「先天性好中球
減少症」――好中球は白血球のうちの顆粒球の1つで、それが極端に少ない
病気――と診断され、ずっと医者にかかっており、身体の抵抗力が弱くすぐ
風邪を引いたりしてしまう、という悩みでした。 白血球はリンパ液など
の他の血液成分とともに骨髄で作られます。先生が
母親に聞くと、T君の場合、
好中球は骨髄液中には顆粒球全体の32%あ
のに血液中には1%しかない、
ということが病院の検査で分かっていました。

 それなら先天性ということはないじゃないか。小林先生はそう考えました。

さあ、物理学者の洞察と追及が始まり、次々と問題が明らかになっていきま

した。それはまるで推理小説のよう。以下がそのナゾ解きでした。

 

     腸内細菌の中に好中球を大量に殺してしまう悪玉菌がいるのではないか、

という疑いからナゾ解きがスタート。『腸内細菌の話』(岩波新書、光岡知足著)

に記された「ブドウ球菌は好中球が攻めてくると毒素を出す。好中球はたどり

着く前にその毒素で死滅する」という説がヒントになった。

     ブドウ球菌は化膿菌の一種でエサは肉などの動物性蛋白質だから、食事

では肉類をやめ、大豆などの植物性蛋白質と野菜を取り、併せてビフィズス菌

を毎日飲むようにT君に指示。すると1か月経ち血液中の好中球の比率が9%

になった。

     続いて骨を丈夫にし骨髄機能を強化することを目論み、炒ったイリコを

毎日ひとつかみずつ食べ、1週間に2回以上、日光浴(ビタミンDを生成し、

骨へのカルシウムの吸収を助ける)をするよう指示。すると数ヵ月後に好中球

が24%になった。

     同じ養生を続け半年後、好中球は32%に。正常値の25%を超えたの

はそれまでどんどん討ち死にしていた好中球を埋め合わせようと、骨髄が懸命

に増産した結果だろうと推定。やがて好中球が死ぬ原因が取り除かれれば正常

値に戻ると見当をつけた。

     予想した通り、1年後、正常値の25%に下がった。

     なぜブドウ球菌がT君の腸内で勢力をもってしまったか、その追求が次

の課題。母親に聞くとT君は3,4歳のとき40度Cの高熱を出し、市立病院

で耐性検査をしつつ1か月以上もとっかえひっかえ抗生物質