H・G・ウェルズに対し日本では小松左京がSF小説で日本破滅を描く

12月2日 How are you doing

 英国の作家H・G・ウェルズが、「開放された世界」で未来の核戦争を描いたのに、
人類はそこから何も学べなかったことを、TV番組から学んだと当欄に昨日書いた。
今日は、その余韻覚めやらぬ中、新聞の溜め読みで、小松左京評を読売でキャッチ。
小松さん(今年死去)の作品は『日本沈没』以外は、多分読んでいない。SF小説は
正直あまり好きでないからだが、「破滅を避ける構想力が必要」という見出しに魅入
られ、その評を読んだ。読書欄の「本よみうり堂」に書かれた評論家・片山杜秀さん
の論評が、猛烈に刺激的であった。
 大震災プラス原発クライシスから立ち上がらなければならない私達にとって、欠か
せない視点までがその論評にあった。頭に叩き込みたくて、その全文を以下に書く。

 『日本沈没(小学館文庫)では、地殻変動で日本が海の藻屑と消える。『復活の日』
(ハルキ文庫)ではウイルス兵器で人類が全滅しかける。
 どちらも今年逝った小松左京の代表作。破滅にこだわった作家だった。小松は「拝
啓イワン・エフレーモフ様」(ジャストシステム刊 『小松左京コレクション1 文明論集』
に所収)というエッセイでこう述べている。
 「<破局>を設定することによってはじめて人間が、そのモラルが、社会機構や文明
や歴史が、いわばこの世界が”総体”として問題にされるのです」
 人間の全部がご破算になりかければ、人間はそれを回避しようと全力を振り絞るだ
ろう。小松が書き続けたのはそういう世界だ。破滅の危機と闘う総力戦文学なのだ。
  小松はなぜそんな作家になったか。 戦争体験のせいと思う。彼は1931年生まれ。
廃墟と化した大阪で敗戦を迎えた。破滅を避けるための構想力。それを裏づける科
学力や技術力。日本はすべてを欠いていた。だから焼け野原になった。せめて文学
で復讐しよう。総力戦文学の誕生だ。
 そんな小松の小説は当然ながら同時代の科学技術と密接に関連した。原子力の話
も多い。 『復活の日』では中性子爆弾の爆発がウイルスの毒性を弱め、人類復活の
希望をもたらす。 現在入手困難な『さよならジュピター』では木星を核爆発させ、その
膨大なエネルギーで太陽系に接近したブラック・ホールを追い払う。
  日本を敗北に導いた原子力。その危険なエネルギーを今度こそ使いこなす。それで
人間が救われる。小松の文学にはそういう主題もある。
  今の日本を救うには遠大な構想力に基づく総力戦が必要だろう。原子力技術への
反省も!  正も負も何もかも、すべてを考えるための材料が小松の小説に詰まって
いる。

 SF小説はどうも・・・という感覚を破滅させないとイカン。
 日本を救うには、遠大な構想力に基づく総力戦が必要!! 3・11の<tragedy>から
だけの救国でなく、いまの経済・社会状況全部の危機からである。そのことを学ばさせ
られる小松左京評である。                  (12/2  宮崎記す)