「放射能汚染問題と向き合い、われら食と農を語る」鼎談分割連載5回目

8月30日 How are you doing

連載5回目

タイトル:「放射能汚染問題と向き合い、われら食と農を語る】

 主催:「NPO食と農」 後援:「財団法人都市化研究公室」

<討論者4人>

小若順一(NPO食品と暮らしの安全基金代表、市民運動家)

 澤登早苗(恵泉女学園大学人間社会学部 学部長 教授、農学博士)

 松下元之(NPO食と農監事、デュ・アン漢方スパ経営、薬剤師)

 宮崎隆典(NPO食と農理事長、ジャーナリスト)

宮崎)20km圏内にも入ったんですか?

澤登)いいえ、外だけです。

宮崎)澤登さんは放射線物理学とかの放射線の専門家ではないわけ
ですが、農学者でいらして、そのお立場から想像してみて調査された
飯館村では、あるいは
20km圏内のどのあたりなら農業は継続してでき
ると感じられましたか? セシウムなどが相当蓄積しているわけですよ
ね、特に原発に近いところでは。何年か先に農業を再開できる可能性
があるでしょうか、あるいは
10年先とか20年先とかでないと再開でき
ないでしょうか。その辺についてはどう感じていますか。

澤登)私は相当難しいと思っています。農地は、耕さないと、手を
入れないとダメになるという問題もあります。もう一つは水源の問題。
これが汚染されると、耕地に流れてくる。そういったことを考え合わ
せると、汚染が激しい地区は相当広範囲に及ぶでしょうし、農業の再
開が厳しい地区は少なくないと思います。ただ、十把ひとからげには
言えない。山一つ越えると汚染が少ないといったことがあるようです
から。だから、早急に実態調査をしっかりやる必要があります。

宮崎)汚染の深刻な地域が何万ha、住民が何万世帯で何万人・何
十万人に及ぶか分かりませんが、2、
3年先に農業が再開できる見通し
があるというそんなに甘い状態ではないということですね。原発を離
れて、三陸はどうかと見れば街は
壊滅しました。復興計画では、高台
に住宅を造り、職場すなわち漁業などには平地に降りてきてやるとい
う案が出ていますが、農業はそうはいきません。高台や平地とかに関
係なくもう生産の場所たる農地を手放さなければならないというとこ
ろが相当でてくる、ということでしょうか。

澤登)三陸のように津波だけの被害の地域と、原発事故による放射
能汚染が著しいところとで一番違うのは、津波だけの被害の場合には
酷い状況はもう終わっているという点です。今なお海水が溜まってい
て、抜けないところについては、わざわざ水田に戻す必要があるのか
という問題もあると思います。地形も変わってしまっているし、もと
もと湿地に近いところを水田にしたわけだから、そこはもう諦めて違
うところに水田を造るといった発想があっていいもいいでしょう。し
かし、それは放射能汚染の問題がないところに限ります。放射能汚染
の地域は全部が汚染されているだけでなく、いまだに事態が進行中で
あることに留意しないといけません。一番の問題は、一刻も早く原発
からの放射能漏れが止まることですが。その上で、まき散らされた放
射能をどうしていくのか、ということになります。しかし、これを取
り除くことは不可能。畑の除染とか言っていますが、そんな簡単な話
ではないですよ。

宮崎)表土を10cm取り除いて客土してなんて言われていますが、
それが出来るようなレベルとか規模の問題ではないと。

澤登)下水処理場の汚泥からも放射性物質が出ています。だから放
射線は、相当広範囲に拡散されている可能性があり、地下水からも出
ているかもしれません。もう一つ、田中先生はもう放射能は飛んでな
いから安心などと言われているようですが、
3月の水素爆発の際に放出
されたものが杉の葉っぱか何かにくっつき、すぐには吸収されない形
になっている、あるいは土の中にセシウムがあったとしても、何かと
結びついて吸収されないタイプになっている可能性があります。しか
し、これを植物に土の中から吸収させるとずいぶん減る。それで考え
られているのがヒマワリで、ヒマワリを栽培し、土壌中のセシウムを
吸収させ、そのタネから油を搾り、その残渣も含めて東電に買っても
らうという形があります。

松下)それを燃やすんですか?

澤登)燃やして灰にする。その残渣は火力発電で使い、灰は東電に
処理してもらう。作業員は
60歳以上の人たちにして。若い人が作業を
通じて被爆することは避ける。そういうプランをどんどん推進してい
きたいですね。

宮崎)下水処理場の問題ですが、そこらにつては官僚はどういう発
想をもっているのでしょう? これからどうするかということですが、
水道だから厚生行政になるのかな。その汚泥を肥料にしようというこ
とだから、農水省も絡むわけですね。この問題、彼らはどうしようと
しているのでしょう?

小若)畑へ入れる汚泥を200Bqに規制したんです。下水処理場のは
8000Bqという基準です。食品は低くてもが200Bqだから、これを下げ
れば、汚泥肥料ももう少し下げられるのだろうけれど。

澤登)汚泥を大量に処理しようとするのは大変。畑はゴミ捨て場で
はありませんから、基