食と農シンポジウムまで34日/農業規模拡大に10a・2万円の勘違い

12月18日 How are you doing

【食と農シンポジウムまで34日 参加者募集中。募集要領は12/15】

2011年度政府予算編成作業が大詰め。TPP(環太平洋経済連携協定)
参加をにらみ、鹿野農水大臣と野田財務大臣との折衝で、賛否両論の
「農家の戸別所得補償」に加え、規模拡大に対する加算金制度を新設、
新たに100億円を計上することが17日、決まったことを各紙が伝えた。

戸別所得補償にも規模拡大加算金にも、筆者は反対だ。民主党が先の
衆議院選挙の際のマニュフェストで戸別所得補償制度をうたったときから
戸別補償は票目当てのバラまきにしかならない、農家の経営力強化には
少しも繋がらない、と言い続けてきた。TPP問題が急浮上し、政府は農家
の経営基盤の強化が必要とし、来年6月ごろまでにそのための基本計画
を立てる方針であり、この規模拡大加算金もその一環なのだろう。

日本の農家1戸当たりの農地面積は1.83haで、EUの1/9、アメリカ
の1/100。これが競争力の弱さの一つであることは事実(詳しく分析する必要があるが)で、いかに効率のいい作業ができる形で大規模化を図るが課題である。今度の規模拡大もそれを促進しようというもので、新聞によると、1ヶ所に農地をまとめて増やすことが条件で、加算金は拡大した農地10a当たり2万円を付与するというもの。やる気のある農家にどんどん規模拡大をやらせようという政策である。

しかし、その誘導策は現場からも理論的にもズレたやり方である。やる気のある農家がこれまでにも自作地の周りの田圃を借りて規模拡大しようと長年努力してきて、それがなかなか実現できなかったのは周囲の兼業農家とかが土地への執着心などのため土地を貸すとか売るとかに、同意しなかったからだ。戸別所得補償制度が一律に(減反協力などの条件を満たせば)実施され、それならと貸していた田圃を取り返す”貸しはがし”
さえ起きている。それほど耕作地の集約は難しく一筋縄では行かないのだ。そのための具体策をどうするか農水省に決め手があるのだろうか。

この加算金制度は、やる気のある農家を援助しようというのはいいとしてお金の使い方が逆ではないのか? 兼業農家などが田圃を貸すとか売るとかするよう仕向けるための”誘導策”として活用すべきではないか。
やる気のある農家は10a当たり2万円とかのお金をもらわなくとも、大規模化して収益を上げるノウハウをもち、収益の見通しが立つからこそ規模拡大を目指すのだから。足腰の強い経営をしている農家を取材している体験からすると、ほとんどの農家が「そんな金は要らない」と言うのではないか。筆者はそう見ている。

この件についての記事の中で日経新聞は次のように書いている。
<ただ効果には疑問の声も上がる。石川県4haほどの農地を借りてコメを作るある生産者は「1年限りの交付金では抜本的な対策にはならない。効果はほとんどないのではないか」と話す。兼業農家も小規模農家も対象にする点は「バラマキ」との批判も根強い>。つまり規模拡大する側は、もらったらもらったで有難いが、という程度の受け止め方なのだ。
つまり、100億円は生きない、のである! いっそのこと、農地を手放す兼業農家や小規模農家にそのための補償という名目で100億円を使ったら、どうか? どうせ使うなら、そちらが利口である。いや、一捻りすれば、もっと賢い使い方があるはずだ。

pm11:55 I’m OK