企業の農業参入加速、という日本経済新聞の一面記事に注目(09/07/18)

■企業の農業参入加速――規制緩和背景に イオン3年で10農場、の記事に注目(7/18)
 今年6月に「農地法」が改正されたのを背景にした企業の動きを、日本経済新聞が特集した。改正農地法では、まだ企業が農地を買い取ることができることにはならなかったが、企業の参入を促すための規制緩和が種々行なわれた。記事では茨城県内を中心にした企業の事業展開が計画も含めて紹介されている。なぜ茨城県が多いのか、「NPO食と農」の農場も同県内なので、その意味でも興味深い。その検証は追って行なうことにして、今後、全国各地でこの種の企業活動が強まることは間違いない。記事の全文を以下に。

企業の農業参入が加速してきた。イオンは茨城県を手始めに3年間で全国十数か所の農場を運営し、1~3割安いプライベートブランド(PB=自主企画)野菜
を販売する。食の安全意識の高まりに加え、参入を促す規制緩和をテコに、ワタミやカゴメなどがすでに始め、セブン&アイ・ホールディングスも全国展開を計
画中だ。小売りや食品関連の大手が履歴の明確な野菜を低コストで自社生産する動きが広がることにより、農業活性化にもつながりそうだ。

 
イオンは企業が自治体から農地を借りる「農地リース方式」を使い、茨城県牛久市の2.6ヘクタールの土地で小松菜や水菜、キャベツなどを9月から生産す
る。参入のための新会社を10日付けで設立した。生産した野菜は青果市場を通さず自社の物流網活用などでコストを削減し、店頭価格を抑える。初年度は約
300トンを収穫し、茨城県や千葉県などの「ジャスコ」15店でPBとして販売する。

 3年後には牛久市の農地を15ヘクタールに広げ、収穫量も1500~2000トンに増やす。今後は北海道から九州まで同規模の農地を広げてPB野菜を販売し、3年後にはPB野菜の売り上げは年間数十億円になる見通し。

 イオンと並ぶ二大小売りのセブン&アイは、農家や農協との共同出資で千葉県に農業生産法人を設立する形で2008年に参入した。農協や農家と連携しながら、今後2年以内に全国10ヶ所に同様の農業法人をつくる。

 先行参入した食品関連大手も事業拡大に動いている。居酒屋のワタミは生産した野菜を自社の約600店でサラダなどに使用しており、13年までに農場の規模を現在の約480ヘクタールから約600ヘクタールに広げる。

 食の安全を巡る問題が後を絶たない中、企業は生産履歴のはっきりした商品を扱っていることを消費者にアピール。農地の担い手不足で耕作放棄地が拡大しているため、野菜などの安定調達基盤をつくる狙いもある。

 
政府は特に00年以降、企業の農業参入を後押しする制度を整備し、05年からは農地リース方式が全国で認められた。同方式で農地を借りられるのは市町村の
指定した場所に限られ、耕作放棄地も多かったが、今年6月に成立した改正農地法が年内にも施行されれば賃借が大幅に自由になる。同時に、原則10%だった
農業生産法人への企業の出資制限も緩和される。

 こうした仕組みを活用してオインやセブン&アイは事業を急拡大するほか、新規参入も増えるのは確実だ。ただ、安定した品質の野菜を大量生産していくには、ノウハウの確立や農業従事者の育成・確保が課題となる。

 

*    企業が農業を手掛ける主な事例*

・イオン(2009年)茨城県で農地リース方式で参入。1~3割安いPB野菜販売へ。

・セブン&アイ(08年) 千葉県に農業生産法人。今後2年内に全国10ヶ所に法人を拡大。

・サイゼリア(00年)  7月末からルッコラなどを水耕栽培。店舗でサラダなどに使用。

・モンテローザ(08年)  牛久市から農地を借りて野菜栽培。居酒屋「白木屋」などで使用。

・カゴメ(1999年) 全国8ヶ所の大型菜園でトマトを栽培。食品スーパーなどへ供給。

・JR東日本(09年)茨城県石岡市の農協と共同で法人設立。駅のそば屋の食材に利用。