農業アラカルト4

12月13日

[ヨーロッパの農家の感性or哲学・・・取材体験と日本農業新聞]

◆標題のポイントは、「宇宙を感じる」「我が家はルネサンスから続く農家」だという点。前者は日本農業新聞の一面コラム『四季』(11/8)。後者は小生の取材体験です。まずは『四季』の全文を以下に。

◆<畑で仕事をしている時に「宇宙を感じる」という話を、ドイツの有機農業者としたことがある▼言われてみれば、作物の生育や土の状態を見るせいか、農作業中は下ばかり向いていた。たまに上を見るのは、腰が痛くなったか雲行きが怪しくなって雨が降りそうな時くらいか。空模様は見ても、その上の宇宙にまで思い至ったことはない▼国立天文題によると8日の昼、地球と金星の間に月が入り、金星が隠される。金星食である。日本で見られるのは数年に1度。明る過ぎて「食」の瞬間は見づらいが、太陽が沈んだ直後に「食」から抜けた金星が、南西の三日月のすぐ右下で光っているそうだ。ビーナスとアルテミス、女神のツーショットである▼「初めて土を耕した時、人は宇宙とのつながりを感じたはずだ」とドイツの有機農業者は当然のように話した。彼の農場では惑星の位置で農作業の日取りを決める。水はかき回し、目となる渦を作り、宇宙を“見せ”てから農場で使う。信じるかはともかく、宇宙を感じながら農業をする人がいることに驚かされた▼くわを振り下ろす背中の後ろで星が動いている。作業能率は落ちるかもしれないが、たまには宇宙を意識してみれば、心を大きく持てそうだ。>

◆いやぁ、奥深い、歯切れのいい、コラム。素晴らしいコラムですね。

◆小生の取材は、15年ほど前のこと。ヨーロッパの有機農業の現状を駆け足で見ようと言うものでした。ドイツではケルン郊外の農家2軒を訪ねました。そのうち1軒は、ジャガイモの生産者。なだらかな台地状のジャガイモ畑を見渡しながら、「我が家は、ルネサンス以来の代々の農家だよ」と淡々と通訳を介して話してくれました。農業に対する誇り高い気持ちが伝わってきました。いい話を聞けた、取材の成果があった、と思ったものでした。(宮﨑記)