足あと

4月15日 How are you doing

曽野綾子さんの本に教えられた詩を書きます。

ブラジルのアデマール・デ・パロスという詩人の「神はわれらと共に」という詩。

さ、まず、読んでください。

   ***

 

夢を見た、クリスマスの夜。

浜辺を歩いていた、主と並んで。

砂の上に二人の足が、二人の足跡を残していった。

私のそれと、主のそれと。

 

ふと思った、夢のなかでのことだ。

この一足一足は、私の生涯の一日一日を示していると。

 

立ち止まって後ろを振り返った。

足跡はずっと遠く見えなくなるところまで続いている。

 

ところが一つのことに気づいた。

ところどころ、二人の足跡でなく、

一人の足跡しかないのに。

 

私の生涯が走馬灯のように思い出された。

 

なんという驚き、一人の足跡しかないところは、

生涯でいちばん暗かった日とぴったり合う。

 

苦悶の日、

悪を望んだ日、

利己守護の日、

試練の日、

やりきれない日、

自分にやりきれなくなった日。

 

そこで、主のほうに向き直って、

あえて文句を言った。

 

「あなたは、日々私たちと共にいると約束されたではありませんか。

なぜ約束を守ってくださらなかったのか。

どうして、人生の危機にあった私を一人で放っておかれたのか、

まさにあなたの存在が必要だった時に」

 

ところが、主は私に答えて言われた。

 

「友よ、砂の上に一人の足跡しか見えない日、

それは私がきみをおぶって歩いた日なのだよ」

 

***

『老いの才覚』(ベスト新書)という109月発行の比較的新しい本です。

この手の本はあまり読まないのですが、曽野さんは白内障の危機を手術で

乗り越えるなどしてこられた尊敬している作家。思い切って手にしました。

172ページの本。普通は30分ばかりで斜め読みする“生き方”の本ですが、

なぜか時間をかけて丹念に読むと、この詩が172ページ目、最後の最後に

紹介されていました。良い小説の最後の素敵な一行に似て、この最後は本当

に感動的でした。見事なマトメ(オチ)でした。斜め読みだと多分読み落と

していたでしょう。おまけにこの本には、参考にしたい付箋を貼った箇所が

10か所ほどにも上りました。何かの力に導かれたのだと思っています。

今朝方、0時~2時半までの読書、どうしても書いておきたくての一文です。

                   (415 宮崎記す)