Web公開の「食」討論会(鼎談)を企画

6月25日 How are you doing

7月11日に、食の専門家による討論会を「NPO食と農」主催で企画しました。
食品の放射能汚染問題が日に日に消費者の心配も、関心も高めています。
次のような趣旨で、明確な切り口で、したがって中味の濃い討論をこの欄で、
発信する計画です。〇〇ホールで行う従来のシンポジウムとは違う、新しい
パターンでの「Web公開討論」となります。討論会後、速やかに公開します。
ご期待下さい。現下での、食討論のスタンスを以下のように考えています。
ご一読下さい。この討論会の設定などで忙しく、またも10日ぶりの更新・・・。

【「NPO食と農」によるWeb公開 食討論】

『リスク時代の「食」を討論する~食を科学的包括的にとらえよう~』(仮題)


<討論の趣旨>

 東日本大震災に伴って発生した東電福島第一原発の事故は、3機まとめての核燃料
溶融(メルトダウン)と放射能大量放出により、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と
同じ危険最悪度「レベル7」(国際原子力事象評価尺度)という最大級の災禍(カタ
ストロフィ)をもたらした。政府と東電は初期対応を誤り、事故を過小に発表したり
肝心な情報を隠すという低劣不埒な危機管理をした。事故収束作業は後手の連続で、
いまだに原子炉を冷温停止状態にできる時期の見通しさえ立っていない。国家と基幹
企業の無能・無責任という人災まで加わり、原発の安全神話は完全に吹き飛んだ。
事故の一部始終は映像でインターネットを通し世界中をかけ巡り、日本の国際的信用
は失墜し、世界中に原発の危険と恐怖を痛感させ脱原発に舵を切る国が相次いでいる。

“絶対に”起きないとされた技術大国日本の原発事故であったが、チェルノブイリ、
スリーマイル(米国)、フクシマと続いた三者三様の三つ目の原発事故は、人々が抱
いていた原子炉に対する危惧を現実決定的なものにし、さらには科学技術そのものに
対する人々の信頼感を揺るがしている。フェイルセイフティ技術が及ばない領域があ
るのではないかという疑念さえ抱かせている。

さらに言えば、フクシマを機にわれわれは原発以外にも横たわる地球環境の危機、
細菌の恐怖、サイバーの脅威等々の「時代のリスク」とどう戦っていくか、これまで
積み上げてきたリスクに対する想定やノウハウを疑ってかかる必要に迫られているの
ではないか。どのリスクに対しても、これなら絶対大丈夫という回避技術もフェイル
セイフティ技術もどうやらなさそうだと、フクシマ・カタストロフィが示唆している
のではないか。


震災後、節電という忍耐や工夫がいま企業にも生活者にも求められることとなった。
結果、われわれはエネルギーや資源の問題を初め社会や経済や政治のあり方、そして
文明そのもののあり方を見直し始めている。

被災地はと見れば、原発周辺地域の多数の人々の避難は長期化しているものの、そ
の外側の三陸地域へは大勢のボランティアが支援に入り、少しずつ復旧が進み、一方
で包括的な復興計画が国と自治体などで練られている。日本全体・国土全体を俯瞰し
ての新しい東北造り・新しい国造りのビジョンとプランが打ち立てられなければなら
ない。

復旧・復興作業を通し、被災者もボランティアも作業従事者も、「人間とは何か」
を考えているはずである。生活を見直し始めた日本人誰もがきっとそうだろう。新し
い国造りのプラン作成もそうした根源的な問いに立ったものでなければならない。

被災者にとって、日本国民にとって、いま数え切れないほどある欲求のうち最も
重要なものの一つが「食の問題」であろう。放射能汚染が止まない水は大丈夫か。
その他の食品は大丈夫か。農地の土壌汚染と海水の汚染が日々広がる中、そこから
取れる農水産物は大丈夫か、と心配は尽きない。


こうした中、「NPO食と農」は4人の論者に集まってもらい、放射能汚染が心配な
「食」を取り上げ、食の放射能汚染の問題にどう対処していくべきかというテーマの
ほか広く食の安全性の問題、食の質の問題、食と健康の問題、食と教育の問題、そし
て食糧と農業の問題などを討論してもらうことを企画した。

食の問題は、毒ギョウザ事件が起きるとしばらくの間だけ中国からの輸入食品を食
べない騒ぎとなったり、
O157事件が焼肉店の「ゆっけ」で発生すると焼肉店の客足が
減ったり、テレビ番組で食品の〇〇が健康や美容にいいという情報が流れると途端に
その食品がスーパーで売り切れるといった具合いに、えてして一過性的であったり、
過剰反応的であったり、暴走的であったりする傾向が見られる。今度の原発事故で言え
ば、放射性ヨウ素への対応のためにヨウ素成分の多い昆布が有効だと聞き、昆布を急に
沢山食べ始めるなど盲信的である場合もある。有機野菜が身体に良いと知ると、農業で
の化学肥料と有機肥料の混用を認めない立場に立つなど頭デッカチになったり、日本の
農業は外国との競争力が弱いと決め込み農業は保護されるべきものという定型的な農業
理解をするなど思い込み型に陥ったりしがちである。そして、それらが横串されてその
人の「食意識」が形成される傾向もあって、そうなると大変厄介だ。人それぞれが個別
の食の価値観をもっているので、食の問題は唯我独尊になりがちだし、歪んで捉えられ
がちでもある。

食の問題は、なにより科学的に捉えられなければならない。そのためには常に学ばな
ければならない。さまざまな情報を正しく理解するリテラシー(批判力)を身に着けな
ければならない。そしてそれらを正しく伝えていかなければならない。食品を生産~消
費という側面で捉えれば、食品がより良く作られ正しく選択され正しく消費されなけれ
ばならない。これらの要請を貫く縦串としてのキーワードを一つ言えば、「医食同源」
を挙げることができるだろう。

食を以上のように捉え、「医食同源」というキーワードに沿って、4人が伝えたいこと
を語り合い、討論してもらおうというのがこの企画の狙いである。

情報は、ある一定のコンテクストで取り上げられ解釈されると意味をもつ。4人のもつ
それぞれの情報が開示され、分析検討され、共有されたあと、それらは
4人の中で新しい
何かを産み、一段と価値ある情報になっていくだろう。

4人の討論は、4人の関係するホームページなどWebで発信されることになる。Webの読
者はそれを受信し、討論を読み深めることができる。そこに、どこかのホールで参加者を
集めて行う討論会にはないメリットがあるのではないか。インターネット時代の新しい
討論へのトライアルにご期待いただきたい。


4人は『放射能を防ぐ知恵』(三五館、共著)を上梓したばかりの「NPO法人 食品と暮
らしの安全基金」代表の小若順一さん、恵泉女子学園大学大学院准教授で農学博士の澤登
早苗さん、「デュ・アン」漢方薬局の経営者で薬剤師の松下元之さん、それに「
NPO食と
農」理事長でジャーナリストの宮崎隆典である。

討論は711日、東京水道橋の「財団法人 日本消費者協会」会議室で行われる。その後、
なるべく早く
4人の関係するホームページ、およびこの討論会を後援する「財団法人 都市
化研究公室」のホームページで公開される。各
URLは追ってこの欄などでお知らせする。   
                           (
625 宮崎記す)